宮城県大和町/陸自最新の戦闘車両「MCV」を見る。

2019年10月6日、宮城県大和町にある陸上自衛隊大和駐屯地で、大和駐屯地創立63周年記念行事が行われ、一般に公開されました。会場は、大変混雑するので臨時駐車場があり、無料シャトルバスが運行されます。

駐屯地の近くにも臨時駐車場がありますが、台数が少なく、すぐに満車になります。私は駐屯地から少し離れた大和町役場の駐車場から無料シャトルバスで向かいました。公共交通機関での来場が推奨されていますが、鉄道路線はなく路線バスのみになり、仙台方面からのアクセスもわかりにくいのが実際の所です。路線バスの乗車に慣れてない人は、無理せず自家用車とシャトルバスを利用するのが無難であると考えます。町役場の駐車場は大きく、お昼頃に会場を後にした際には、駐車場に余裕がありました。

大和駐屯地には、情報収集を担う第6偵察隊と第22即応機動連隊機動戦闘車隊が所在します。

このうち、第22即応機動連隊は、2019年3月26日に編成された新しい部隊です。従来の第22普通科連隊と第6戦車大隊、第6特科連隊、第6高射特科大隊の一部を統合し再編した部隊で、これまで有事の際に普通科(通常の軍隊の歩兵に相当)連隊を母体に機甲科(戦車や偵察隊など)、特科(砲兵に相当)などで編成される普通科戦闘団とは異なり、常に普通科、特科、機甲科の複数の職種が一つの連隊としてパッケージ化されてる事で、部隊名にある通り、単一職種からなる連隊に比べ、平時から高い即応制を有している部隊です。

即応機動連隊は、移動、展開能力を重視するため、航空自衛隊の輸送機に搭載する事が可能な装備が優先的に配備され、車両の面においても不整地走破能力を重視した、戦車などの装軌式車両(キャタピラを持つ車両)に変えて、今回の目玉である最新車両、16式機動戦闘車(MCV)をはじめとした、舗装された一般道路を利用し機動的に展開する事が可能な、装輪式車両(タイヤを用いる)が配備されています。

第22即応機動連隊の大半は多賀城駐屯地に所在しますが、機動戦闘車隊については、母体となった第6戦車大隊と同じく、大和駐屯地に所在しています。

自衛隊の有する戦闘車両の中でも最新となる16式機動戦闘車(通称MCV)は、従来の戦車と異なり、走行装置が無限軌道(キャタピラ)から、タイヤを使う装輪式に改められ、舗装路を時速100km/h以上で走行が可能と言われています。砂地などの不整地の走破能力は従来の戦車に劣りますが、都市部での行動や遠隔地への展開能力は戦車よりも優れています。26t程度と重量も軽く、航空自衛隊のC-2輸送機に搭載する事も可能です。

乗員は4名で兵装は、主砲の52口径105mmライフル砲に加え、副武装にブローニングM2 12.7mm重機関銃(砲塔上部に搭載)、74式車載7.62mm機関銃(主砲同軸に搭載)の3種類で、主砲の105㎜砲は、フル規格の戦車砲で、従来の74式戦車と弾薬を共用できるのも特徴です。こうしたタイヤを有する車両では、射撃時の安定性をコントロールする事は難しいとされていましたが、センサーや射撃統制装置等に、10式戦車の技術がフィードバックされた事で、行進間射撃やスラローム射撃など、難易度の高い射撃が可能になり、戦車とも十分に交戦する能力を持ちます。

その車体重量の軽さから、防御力は戦車には及ばないものの、歩兵が携行する小銃、対戦車火器などには、一定の防御力があると言われています。

ただし、そのサイズや重量の軽さでは、戦車に匹敵する装甲を与える事は困難であり、命中精度も戦車に及ばないと考えられるため、戦車の完全な代替とはならず、10式戦車と並行して配備が進められる計画でしたが、10式の調達が減らされるなどしたため、本州や四国など戦車の重要度が低い地域では、従来の戦車の歩兵への火力支援任務の代替として導入が進んでいくと見られています。

さて、大和駐屯地の一般公開では、車両などの装備品展示だけでなく、訓練展示として、機動戦闘車をはじめ、偵察オートバイ、装輪装甲車などが、走行する様子や、機関銃、主砲の空包射撃など迫力ある訓練の様子が展示されます。空包射撃は、大きな音が出ますので、子どもや敏感な方は注意が必要です。車両に赤旗が付けられると、発砲する合図です。16式MCVの射撃時の高い安定性や機動力を見る事ができます。空包射撃は、軽装甲機動車(通称LAV)の上面ハッチに搭載された5.56㎜ミニミ軽機関銃や、87式偵察警戒車の同軸機関銃である74式車載7.62㎜機関銃の射撃も見る事ができます。音は、16式MCVの主砲よりも小さいです。


第6偵察隊の偵察オートバイや偵察警戒車(RCV)迫力満点でした。当日は、グラウンドもぬかるみが酷く、車両が走行すると、泥や水しぶきを跳ねて、大変迫力ある様が見られました。

多賀城駐屯地の第22即応機動連隊本部管理中隊の93式近距離地対空誘導弾を装備する高機動車(トヨタ メガクルーザー)も迫力ある走りを見せました。

飛沫をあげて砲を指向させる16式機動戦闘車MCV。

訓練展示を終えた車両はそのまま展示されました。観客のリクエストに応じて、砲塔を旋回させたり、砲の仰角を変えるなど、面白い展示の仕方をしていました。(放送でも、リクエストに応える事をアピールしていました)

装備品展示。96式装輪装甲車。2名の乗員とは別に、10名の普通科隊員を乗せる事ができ、後部のハッチから速やかに乗降ができます。状況に応じて、タイヤの空気圧をコントロールできるほか、パンクした際も、ある程度、走行を継続する能力があります。

入り口の近くには、退役した戦車や火砲、ヘリコプターなどが展示されています。

16式MCVと交代で大和駐屯地を去った74式戦車や国産初の戦車61式やOH-6偵察ヘリコプターなどが展示されています。


新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年の自衛隊関連のイベントや記念行事は軒並み中止となってしまいました。大和駐屯地創立64周年記念行事も、感染拡大防止のため中止になってしまいました。来年は開催される事を祈っています。

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